骨の痛みの種類
骨の痛みは、外傷に起因するものや、過度なストレスや運動に起因するものなど、いくつかの種類に分けられます。
骨折
衝突や転倒、交通事故などによる外傷によって骨折した状態です。
疲労骨折
激しいスポーツや身体に過度なストレスがかかり、疲労が蓄積することで骨折した状態です。
骨端線損傷
成長期に強い打撲や捻挫が起こることで、成長軟骨が損傷した状態です。
圧迫骨折
骨粗鬆症が原因で骨が脆くなり、胸椎や腰椎が外部から圧迫されて骨折した状態です。
骨折の定義
骨折は、完全に骨が折れた状態だけを指すのではなく、骨の一部が欠けた状態、骨に骨折線が少し入った状態、凹んだ状態、圧縮された状態なども骨折に該当します。例を挙げると、検査を受けて骨にヒビが入っていたと分かった場合、「骨折はしてないのか」と安心する方もいらっしゃいますが、骨折として診断されます。
骨折の原因
骨折は外傷によって起こることが多いですが、疲労や疾患によって起こることもあり、以下の3つに大別されます。
外傷性骨折
衝突、転倒、転落、交通事故などによる外傷が原因の骨折です。
疲労骨折
激しいスポーツなどでの負荷により、疲労が蓄積したことが原因で起こる骨折です。
病的骨折
骨腫瘍や骨粗鬆症などの疾患により、骨が弱くなることが原因で生じた骨折です。
骨折の可能性がある症状
以下のような症状が起きている場合、骨折している可能性があります。
- 圧迫すると痛む
- 体重を乗せると痛む
- 腫れが生じている
- 内出血が起きている
- 日を追うごとに痛みが強くなる
など
早急に受診すべき症状
変形
皮膚の一部が盛り上がり、変形が起きている。
腫れ
外傷を負った部分に腫れが見られる。
痛み
患部を押すと、捻挫などと比べ物にならないくらい強い痛みが現れる。
筋力低下
患部に力を入れることができなくなる。
音
患部を動かした際に「ポキポキ」と音が鳴る。
青あざ(骨折から数日後)
骨折すると内出血を起こすことがあります。2~3日経つと内出血を起こした部分が、青あざ(皮下出血斑)として皮膚表面に現れることが多いです。
軽い骨折(不全骨折など)の場合、痛みはあまりなく手足は動かせますが、青あざが数日後に現れた場合は骨折が疑われるため、早めに専門医に診てもらいましょう。
低血圧やめまい
骨折が原因の低血圧やめまいは2種類に分けられ、種類に応じた対処が求められます。1つは足や腕の骨折によって、自律神経のショック症状として起こるものです。
もう一方は、骨盤骨折などによって、出血性ショック症状として起こるもので、バイタルサイン(生命活動に置ける重要な指標)が変動します。このケースは重篤な状態のため、輸血処置を行わなければなりません。
高齢者では、外傷後すぐは歩けたとしても、数時間後に歩行困難になることもあるので、骨が弱くなっている高齢者は特に注意が必要です。
骨折の画像診断
レントゲン撮影
X線を照射し、骨などの体内の状態を撮影する検査です。レントゲン検査として一般的に知られているもので、骨折があるかどうかをチェックします。
MRI撮影
MRI(磁気共鳴画像法)とは、強い磁石と電磁波を使って体内の状態を断面像として映し出す検査で、X線を利用しないので侵襲性が低いものとなっています。MRI検査は、一般的なX線撮影では確認が難しい、微細な骨折や圧迫骨折、疲労骨折などを正確に確認可能です。当院では、MRI検査を必要と判断した場合、連携している医療機関にご案内します。
CT撮影
CT検査(Computed
Tomography)は、X線を使って体内の状態を断面像として映し出す検査です。骨折部位や骨のずれの状態(転位)などを正確に確認できます。当院では、CT検査を必要と判断した場合、連携している医療機関にご案内します。
骨折の治療
骨折の治療は保存療法と手術療法の2つから、骨折の状態に応じて最適な方法を選択します。保存療法は骨のずれが小さく、骨折の治癒が見込める場合に行います。一方、手術療法は骨が大きくずれたり、変形している場合や、自然治癒が期待できない場合に行います。
保存療法
骨折した部位によりますが、骨折部がずれないように状態を維持するため、しばらく固定する必要があります。固定している期間中は、周辺部位が硬くならないようにリハビリが必要です。
手術療法
骨が大きくずれており、自然治癒が期待できない場合は手術療法が必要です。ピンニング固定、プレート固定、スクリュー固定などいくつかの方法があり、最適なものが行われます。当院では、手術療法が必要と判断した場合、連携している高度医療機関にご案内します。
超音波骨折治療
超音波骨折治療とは、微弱な超音波を照射して患部の細胞を刺激し、骨の再生を促す治療法です。自然治癒よりも早く治すことができ、約40%早くなったという研究データがあります。早く治療を開始できれば、治療期間の短縮に繋がります。
骨折が治癒するまでの過程
骨折は、「炎症期」「修復期」「リモデリング期」の3つの段階を経て治癒していきます。この3つの過程では、それぞれ異なる細胞が働きます。
炎症期
炎症期では、骨折部周辺に腫れや痛みが起こりますが、これは血流の増加と免疫細胞の働きが原因です。免疫細胞の働きによって、損傷した骨の破片や組織、内出血した血液などが排除されます。
修復期
修復期では、ヒビや入った部分や折れた部分に、カルシウムを含まない新しい骨である「仮骨(かこつ)」が形成されます。仮骨はゴムのような柔軟で、脆い骨です。そのため、安定しておらず、圧力が加わると折れやすい状態です。
リモデリング期
リモデリング期に入ると、骨が元の状態まで回復していきます。
仮骨が強度の強い骨に変化していき、正常な形・構造に戻ります。
骨折部位ごとの治療期間
部位 | 仮骨出現 | 骨癒合 | 機能回復 | |
---|---|---|---|---|
指の骨 | 2~3週 | 3~6週 | 6週 | |
中手骨 | 2~3週 | 3~6週 | 6週 | |
橈骨 尺骨 | 肘関節内 | 3週 | 5週 | 12~14週 |
骨幹部 | 3週 | 6~8週 | 10~12週 | |
手関節内 | 3週 | 6週 | 7~8週 | |
上腕骨 | 上端部 | 2~4週 | 6週 | 8~12週 |
骨幹部 | 2~4週 | 6週 | 8~12週 | |
下端部 | 2~4週 | 6週 | 8週 | |
骨盤 | 4週 | 8週 | 8~16週 | |
大腿骨 | 頚部 | 12週 | 24週 | 60週 |
転子間部 | 4週 | 12週 | 16週 | |
骨幹部 | 6週 | 12週 | 14週 | |
顆上部 | 6週 | 12週 | 14週 | |
膝蓋骨 | 6週 | 6週 | 6~12週 | |
脛骨 腓骨 | 膝関節内 | 6週 | 6週 | 14週 |
骨幹部 | 4週 | 6週 | 12週 | |
中足骨 | 2~3週 | 3~6週 | 6週 |