ロコモティブシンドロームとは
ロコモティブシンドローム(locomotive
syndrome:運動器症候群)とは、関節や骨、筋肉、神経などで構成された運動器が障害を起こし、移動機能が低下した状態を指し、「ロコモ」と略して呼ばれることもあります。
骨が身体を支え、椎間板や関節軟骨が衝撃や曲げに対応し、神経が適切に機能することで、筋肉の動きを可能にします。ロコモは、生活習慣や加齢などの影響で、この身体を動かす過程のどこかで異常をきたし、歩行や日常動作に障害が起こる状態です。
悪化すると1人では生活することが徐々に難しくなり、最終的には寝たきりの状態や介護がないと生活できない状態になる恐れがあります。
ロコモは、2007年に日本整形外科学会が、日本に起こる「超高齢化社会」を見据えて提唱した概念で、「放っておけば要支援・要介護の状態になる可能性のある、変わりうるけれども慢性的、永続的な運動器の障害」を意味します。
要支援・要介護状態になる要因で最も多いのが運動器障害
健康上問題なく、1人で日常生活を送れる期間のことを「健康寿命」と言います。
2013年のデータによると、平均寿命から健康寿命を引いた期間、つまり生活していく上で支援や介護が必要になる期間が、男性では約9年、女性では約12年となりました。寝たきりの状態など支援・介護が必要な期間を少しでも短くすることが健康寿命を延ばすことに繋がります。要支援・要介護になる要因を多い順から並べると、運動器障害、脳血管障害、認知症となり、運動器障害は全体の25%となっています。
要支援・要介護状態になると、ご本人のみならず、家族や友人などにも大きく影響します。
ご自身のみならず、周囲の方々のことを考えても、運動器の健康維持はとても大切なことです。
ロコモティブシンドロームの原因
日本は超高齢化社会に突入し、平均寿命は80歳以上となり、65歳以上人口は3,000万人に上ります。このような社会背景もあり、加齢に伴う運動器の機能低下は誰にでも起こり得る問題となっており、非常に危惧されています。
ロコモティブシンドロームは、下記の3つの疾患が原因で起こると考えられています。
主な疾患の推定患者数を日本の人口に当てはめると、変形性脊椎症が3,790万人、変形性膝関節症が2,530万、大腿骨頸部の骨粗鬆症が1,070万人、腰椎の骨粗鬆症が640万人となります。また、これらの疾患を2つ以上発症している方も多数いると考えられています。
疾患 | 日本の人口あたり |
---|---|
変形性脊椎症 | 3,790万人 |
変形性膝関節症 | 2,530万人 |
骨粗鬆症(大腿骨頸部) | 1,070万人 |
骨粗鬆症(腰椎) | 640万人 |
ロコモティブシンドロームのセルフチェック(ロコチェック)
以下に記載している項目は、いずれも骨や関節、筋肉などの運動器が老化していることを暗に示しています。いずれかに当てはまる方は、改善を目指してロコモーショントレーニング(ロコトレ)に取り組みましょう。
- 自宅で滑ったりつまずいたりする
- 手すりがないと階段を昇れない
- 靴下を片足立ちで履くのが難しい
- 布団を干す、掃除機をかけるなどの多少重い仕事が難しい
- 15分ほど歩くとつらくなる
- 信号が青になっている間に横断歩道を渡り切れない
- 2kg程度の買い物袋(1ℓの牛乳パック2本程度)を持って家に帰るのが難しい
若い頃から運動を習慣化しましょう
筋肉や骨量は20〜30代にピークを迎え、適度な運動や栄養のある食事を摂らないと減っていきます。40〜50代になると衰えを自覚するようになり、60代以降になるとそれまでできていた動作ができなくなることがあります。
なお、年齢問わず、運動習慣がない方とある方を比較すると、ある方の方が体力が維持されるということが分かっています。そのため、若い頃から運動を習慣的に取り組むことが重要です。また、骨や筋肉と同じく、椎間板や軟骨も維持するためには適度な運動が不可欠です。ただし、身体に過度に負担がかかる運動や肥満は、かえって損傷の原因になることがあります。また、過度に痩せている場合も骨や筋肉が弱まってしまいます。肥満も痩せ過ぎも運動器には好ましくない状態なので、気を付けましょう。
日本整形外科学会では、「生涯にわたり、自由に歩き続けるためにも、ロコモを予防して健康寿命を延ばすことが重要である」と提唱しています。日本整形外科学会のホームページに、ロコチェック、ロコトレなどの様々な情報が記載されていますので、是非チェックしてみてください。
ロコモーショントレーニング(ロコトレ)
ロコモは様々なレベルに分けられ、満足に歩ける場合と歩くのが困難な場合では、トレーニングの内容も変わってきます。
ロコトレは、「足腰の筋力強化」、「バランス力の向上」、「膝や腰への負担軽減」の3つを目的に実施します。ご自身に合った負担が少ないやり方で、最初は「片脚立ち」と「スクワット」に取り組みましょう。
片脚立ち
左右の脚で1分ずつ、1日に合計3回やってみましょう。
※姿勢が曲がらないように注意しましょう。
※支えがないと転倒してしまいそうな場合、机に指や手を置いても問題ありません。
※片脚を床につかない程度に上げて、転倒してしまわないように、何かつかまるものがある場所で行ってください。
スクワット
深呼吸の間隔で5〜6回行ってください。これを1日3回やってみましょう。
肩幅より若干広く足を開き、つま先は30度くらい開けてください。
膝は足の人差し指の方向に向け、つま先より前に出ないように気を付けながら、お尻を後ろに引く感覚でしゃがみ込みます。
スクワットが難しい場合は、手を机に置いて、椅子に腰をかけ、立ち座りの動きを行うだけで大丈夫です。
※スクワット中は息を止めないでください。
※膝に過度な負担がかからないように、90度以上曲げないようにしましょう。
※太ももの周囲の筋肉に力を入れることを意識し、ゆっくり動作を行ってください。
※支えがないと転倒してしまいそうな場合、机に指や手を置いても問題ありません。