変形性膝関節症
変形性膝関節症とは
膝関節の骨の表面には軟骨があり、骨同士が衝突しないようにクッションの働きをしていますが、加齢や関節を支える筋力の低下などによって摩耗してしまうことがあります。 変形性膝関節症は、軟骨が摩耗することで痛みや変形が起こり、様々な症状を引き起こす疾患です。骨同士がぶつかることで骨棘(こっきょく)と呼ばれる突起物が生じるケースや、関節包(関節を包む繊維状の膜)に炎症が生じ関節液が過剰に分泌され、水が溜まって膝が腫れた状態となるケースもあります。
変形性膝関節症の原因
原因として多いのは、加齢に伴って起こる膝関節の軟骨の老化です。このことから、変形性膝関節症は高齢者によく見られます。また、骨密度の低下も影響しており、女性ホルモンが減少する閉経後の女性も発症しやすく、比較的女性によく見られます。
加齢以外にも、長時間歩く仕事や立ち仕事などによる膝への過剰な負荷、肥満なども原因に挙げられます。疾患の後遺症として起こることもあり、半月板損傷、靭帯損傷、骨折などの外傷、化膿性関節炎などの感染症などが原因として考えられます。
変形性膝関節症の症状
変形性膝関節症の症状は、初期、中期、末期に大別され、それぞれ異なった症状が出現します。
初期の症状
- 歩くと膝が痛くなってくる
- 休憩すると、膝の痛みが和らぐ
- 立ち上がろうとすると膝が痛くなる
中期の症状
- 正座ができなくなる
- 階段の昇降ができなくなる
- 長い距離を歩けなくなる
末期の症状
- 歩行困難になる
- 膝を真っすぐに伸ばせなくなる
- 大きく膝が変形する
- 日常生活に影響を及ぼす
変形性膝関節症の検査・診断
まずは、診察室に入ってから椅子に着座するまでの歩行の状態を見て、痛みや異常がないかを確認します。
その後、問診にて痛みや症状の出現するきっかけについて丁寧にお伺いし、触診では関節の可動域や安定感、痛みの程度、腫れ、変形などをチェックします。さらに、レントゲン検査にて関節の骨の状態をチェックしますが、軟骨の状態を詳細に確認するため、追加でMRI検査を実施することもあります。
炎症が強く現れている場合、患部に針を刺して貯留している関節液を抜き、性状を確認する「関節穿刺」を実施することがあります。通常、関節液は黄色の透明な液体ですが、白濁・黄濁している場合は化膿性膝関節炎が疑われるため、追加で血液検査を実施します。
変形性膝関節症の治療
変形性膝関節症治療では、最初に保存療法を実施します。変形性膝関節症の保存療法は、生活指導、運動療法、物理療法、装具療法などの理学療法や薬物療法があります。
また、患者様の血液を利用して、関節内の炎症を抑えたり、組織の再生を促すPRP療法(PFC-FD療法)も効果的です。当院もPRP療法に対応していますので、お気軽にご相談ください。
こうした保存療法を行っても、日常生活に支障が出るような強い痛みが続く場合には手術療法を選択します。
生活指導
膝に負担がかからない靴の選び方、歩き方の指導を実施します。肥満の方には並行してダイエット法などの指導も実施します。
運動療法
痛みが生じることで運動する機会が減り、膝を支える筋力が低下します。その結果、さらに症状が悪くなる悪循環に至る恐れがあります。運動療法では、膝に負担がかからない範囲で、膝関節周りの筋肉を鍛える運動を指導します。例えば、エアロバイクや水中歩行などが挙げられますが、ご自宅でできるものもあります。
物理療法
膝の周囲に干渉波を当てる治療、超音波治療、温熱療法などの物理療法があります。
装具療法
患者様の状態に応じて、足底板やサポーターなどを使用します。
薬物療法
消炎鎮痛薬の内服、外用薬などを用いて痛みを緩和させます。また、ヒアルロン酸を膝関節内に直接注射することも効果的です。
上記の治療で改善が見られない場合は手術療法を実施することもあります。当院では、手術療法が必要と判断した場合、連携している高度医療機関に紹介させていただきます。
変形股関節症
変形性股関節症とは
変形性股関節症とは、股関節の軟骨が摩耗することで、骨同士が衝突して痛みが生じる疾患です。股関節は足の付け根部分にある関節を指し、大腿骨の先端と骨盤の骨が組み合わさってできています。軟骨は骨の表面を覆う滑らかな組織で、骨の衝突を防ぐ役割を担っていますが、肥満や遺伝、加齢などにより摩耗すると、変形して可動域が制限されたり、歩くたびに痛みが生じたりします。
股関節はどういう形をしているの?
股関節は大腿骨と骨盤を接合する部分です。股関節は人体で最も大切な関節で、歩く、走る、階段を昇降するといった動きを行うのに不可欠です。
股関節は、大腿骨の先端の骨頭(こっとう)と呼ばれる球状の部分が、骨盤の寛骨臼(かんこつきゅう)と呼ばれるソケットにはまり込む構造になっています。膝や肘は関節の曲げ伸ばしができませんが、股関節は曲げ伸ばしのみならず、前後左右に動かせ、高い自由度を持っています。また、強力な靭帯や関節包、筋肉が周囲を保護し、体重がかかっても安定して動かせるようになっています。
発症の原因
- もともと股関節の形状異常がある
- 加齢性の変化
- 肥満、急激な体重増加
- 激しいスポーツ
- 変形性股関節症の家族歴
- 過去の股関節の損傷・骨折
軟骨は加齢に伴って段々と摩耗していきます。肥満も股関節にかかる負担が大きくなり、軟骨の摩耗が進みます。変形性股関節症の家族歴がある方は発症リスクが高いです。動きが激しいスポーツは股関節への負担が大きいので、軟骨が摩耗しやすいです。外傷も股関節にダメージが及び、軟骨が摩耗してしまう可能性があります。他にも、股関節の形態異常がある方も発症リスクが高いです。
症状
変形性股関節症の症状は、初期、進行期、末期の順に悪化していき、それぞれ異なった症状が現れます。
初期の症状
股関節の可動域が制限される
歩き出す、立ち上がる、階段を昇降するなどの動作時に違和感や痛みが現れる
進行期の症状
- 日常生活に影響が出るほど痛みが強く現れる
- 歩くことが難しくなる
- 階段の昇降が難しくなる
- 足の爪を切ることが難しくなる
- 靴下や靴を履くのが難しくなる
- 寝返りを打つのが難しくなる
- しゃがんだり、正座をしたりするのが難しくなる
末期の症状
- 痛みが進行期よりも強くなる
- 歩行が難しくなる
- 左右の脚の長さが揃わないようになる
- 股関節をピンと伸ばすことが難しくなる
治療法
保存療法
生活指導
症状の悪化を予防するために、股関節にある軟骨がこれ以上摩耗しないようにすることが重要です。これには、日常生活でいくつかの取組みが必要です。
ダイエット
体重が増加すると、股関節にかかる圧力が増大します。ダイエットによる体重減少は、関節への負担を軽減し、痛みを和らげるのに効果的です。
ライフスタイルを洋式に変更する
和式トイレや布団などでは立ち上がる際に股関節に負担がかかりやすいです。洋式トイレやベッド、椅子などに変更するだけでも、股関節にかかる負担の度合いは大きく変わってきます。
薬物療法
薬物療法では、消炎鎮痛剤を使用することで、炎症の抑制・痛みを和らげ、日常動作の改善を目標とします。
痛みが強い場合や、急に激しい痛みが生じた場合には特に効果的です。
運動療法
運動療法では、筋力トレーニング、有酸素運動、ストレッチを実施し、機能改善・痛みの緩和を目標とします。変形性股関節症の進行度合いに関わらず、効果が期待できます。股関節は筋肉などによって安定性を保っているため、機能改善には周囲の筋肉を強くすることが大切です。
手術療法
保存治療を実施しても痛みが治まらず、日常生活に影響が生じている場合は、手術療法が検討されます。若い方や病状が初期段階であれば、股関節の骨を一部移動して関節のバランスを改善する骨切り術が検討されます。一方、中高年の方や病状が進行期以上になっている場合は、人工股関節置換術を実施することが多いです。